July 16, 2017
アニメーターの回顧録
動画チェッカーの仕事
動画チェッカーの仕事は上がって来た動画をチェックして、リテーク戻したり、自分で直したりする。作監や仕上げから「ここ描き直して」ってオーダーされたり(舘野さんの場合、動画まきや新人指導もしたそうだ)。メインスタッフとして大御所と机を並べて仕事する環境に身を置くことは、その他大勢の動画マンではなくなった感覚だ。仕事は修正が中心だから面白くはないけど、メインスタッフの1人になる機会は貴重なキャリアになる。原画マンになる前段階がチャンスだけど、動画キャリアがあればやれる仕事でもない。腕を認められた動画マンが指名される。通常のTVシリーズには動画チェックを置く余裕はないので、劇場、TVスペシャル、合作(海外作品)など製作費の大きい作品に限られた。つまり動画チェッカーのイスはわずかなの。動画チェッカーの経験なく原画マンになっちゃう方が普通なくらいね。
動画チェッカーのギャラは枚数でなく月ごとか作品ごと。オレは原画になる前にフルアニメの合作と東映の劇場用長編で動画チェックを経験した。35年前ね。劇場の動画チェックのギャラは手取りで27万/月だったので、20歳の動画マンにしては破格の収入だった。なので動画チェッカー専業なら収入は定期的なので安定する。普通は原画マンになっちゃうけど、専業で稼いでた人もいたよ。でも作品契約だからパタッとなくなるリスクもある。
この本では動画チェッカー目線で「ジブリの動画の原則」や「他社との線の違い」、歩きでありがちな間違いなどがわかりやすく解説されてた。
師匠から学ぶ
昔はアニメーターなら必ず師匠がいた。学校の先生と違って指導は仕事じゃないのに、現場で後進を育成するってゆー使命感で自分の仕事があるのにわざわざ時間を割いてくれるので厳しい。宮崎さんのようにホチキスで止めてゴミ箱にポイなんて珍しいことじゃない。手取り足取り教えてくれる訳じゃないので、自分で学んで行くしかない。舘野さんも宮崎さんの近くの席だったことで、引き出しを満たしていった。舘野さんが宮崎さんから学んだことって、オレが師匠から学んだことと同じことが多くてびっくりした。たとえば瞼の描き方もそのひとつ。オレも同じこと言われた!なんでだろ、東映の伝統なのかな。
師匠から学んだり、先輩から盗んだりをしてない人はぜひ読むべきだね。師匠も師匠から学んで来たわけで受け継いで行くんだな。舘野さんが保田道世さんから聞いた話は、保田さんが森康二さんから聞いたこと。そして、舘野さんは宮崎さんから学んだり怒られたり、耳にした言葉を文章で示してくれた。師匠が間近にいなければ知り得ないことの数々はアニメの教則本では得られるものではないのがこの本のすごい意義だと思う。宮崎さんだけでなく高畑さんや金田伊功さん、大塚伸治さんのエピソードもあったよ。
不可解なこと
父の余命宣告を受けていたので、高畑さんから『山田くん』の動画チェックを依頼されたときに、辞退させていただきました。復帰後、鈴木Pから『山田くん』の動画チェックをわざわざ依頼され、結局「お引き受けします」と。舘野さんはジブリの社員なので、手空きならこっち入ってって上で決めるのアリだと思うんだが、そこは辞退できるの?って思った。いつか西荻のササユリカフェ行って聞いてみたいな。
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Posted by A.e.Suck at July 16, 2017 04:12 PMTweet