R E V I E W of TRILOGY_

 日本で「スターウォーズ」が公開された1978年夏、現在では名前が残っていない中日シネラマ劇場で、2回続けて観た。120分を越える作品を1日に2回も観るなんて、今では考えられないことだ。日本公開以前、海の向こうでの評判を、映画雑誌は「惑星大戦争」というまぬけな邦題で紹介していた(余談だが、「惑星大戦争」は後に東宝のSF映画のタイトルになるが、こちらは内容までまぬけだった)。オープニング、ブロッケード・ランナーを追うデストロイヤーに衝撃を受けたのは、みんなそう。ハリウッドのみならず、日本のアニメ界にも大いに影響を与えた。まさか2年後、手描きでコレをやるハメになるとは思ってもみなかった。その後「帝国の逆襲」をテアトル東京で、「ジェダイの復讐」を有楽座で観ましたが、これらの劇場は今はもう、ない。長い年月を経て、「スターウォーズ」は特別編となって、日本のスクリーンに!変更点を中心に紹介しよう。

08/03,日比谷スカラ座
「スターウォーズ ジェダイの復讐<特別編>」
STAR WARS : RETURN OF THE JEDI ('97), 137min.
 3作目ともなれば、技術力・資金力とも充実してて集大成の趣きがあったし、それほど修復する必要はないんじゃないかと思ってはいたが…。「ジェダイの復讐(ROJ)」の初公開に先がけて、東宝は宣伝の一環で「日本スターウォーズファンクラブ」を企画し会員を集めた。入会特典として、ROJオリジナル予告編収録カセットテープ、定期発行の会報、そして金属プレートの会員証が送られて来た。しかし、ROJが公開されるや、このファンクラブは消滅…。

 ジャバのサロンでのショーがグレードアップされたのは有名だけど、特にいいのはCGIで歌い踊るサイ・スヌートルス!パペットを下から必死に操作していたギコチなさはもうない。そして、ダンサーの一人が床下に落とされる。そのダンサーの運命や如何に?前バージョンでは悲鳴のみだったが、今回は悲鳴の前に、床下に落とされたダンサーの恐怖の表情が挿入されている。続いてランカーのゲートが開きかけるところでカット。おっと、「ランカー」の表記が「ランコア」に。この「ランコア」とルークのカラミは従来のままなので、オプティカル特有の色合いの差はくっきり。古き時代のSFXの名残り。

 砂漠を行くバンサの群れが初登場。左へパンして、サルラックへ向かうセールバージとスキッフにつなげている。サルラックは触手と口の部分をCGIで追加している。さすがに前バージョンはちゃっちかったもんね。

 スピーダー・バイクのチェイス・シーンは、ステディ・カムで撮影したフッテージを合成したPOVショットを除いてやはり好きになれない。原点は「ベン・ハー」の戦車競争なんだろうけど、バイクが虫みたいなの。バイクと木の対比に違和感を覚える。

 デススター2の爆発ショット、デススター同様ワッカが追加されている。但し今回は横に広がる。そーじゃなくって、破片を追加してくれよぉ!パーティクルでいいからさ。それに爆発ショットは反乱軍なめの大ロングで見せて欲しかった。

 ラストシーンは、曲も変更になってよりゴージャスになった。エンドアの空の花火に続いて、追加シーン、舞台となった各星で歓喜する人々のモブシーンが見られる。クラウド・カーが飛ぶクラウド・シティ、スカイホッパーが飛ぶモス・アイズリー、そして見覚えのない「どこかの都市」。1カットずつだけどキャメラワーク付き。3つめの「どこかの都市」だが、プログラムによると、コルサントという銀河の中心の都市らしい。

 この後シーンはエンドアに戻って、祝勝会。ルークがウェッジと抱き合うカットは初公開か?このラストシーンは相変らず感動的。エンドア、デススター2の外と内とで活躍したキャラクターが集結。おまけにアナキン、ヨーダ、オビワンの3人が揃って微笑んでるとなれば涙が出ます!

07/19,日比谷スカラ座
「スターウォーズ帝国の逆襲<特別編>」
STAR WARS : THE EMPIRE STRIKES BACK ('97), 129min.
 まず、初公開時の岡枝慎二氏の字幕で「ランド・カルリシアン」と表記されたハンの悪友の名前が、今回から「カルリジアン」ニなった。この「カルリジアン」がルークを救出するため、ファルコンのエレベータで上がってくるショットは素晴らしい!カーボン・フリーズされるハンが下がっていくショットと対になってる。どちらもポイントは目線だ。高さの変化によって、ハンの目線は変化し、ランドの目線は変化しない。

 ワンパに捕えられ、逆さ吊りにされたルークはフォースでライト・サーベルをGetする。元はこの時、ワンパは外出中だったんだが、今回は食事中になってワンパの登場カットが増えた。ルークが彼にとって、御馳走だったことが強調された。

 字幕スーパーをもう少し。今回の林完治氏の字幕はよりオリジナルのニュアンスに近くなった。また「飛行機」は「スピーダー」に、「戦車」は「ウォーカー」と表記されている。

 ホスでのスノー・スピーダーや、ホスを脱出する輸送船のマスクは修正されている。これでスクリーンからミニチュアの黒い輪郭がすっかりなくなった。

 AT-ATと共に進撃するAT-ST。前のめりに走る姿が、やけにくっきりして目立つようになった。画面奥なのにね。

 ホスから脱出し、帝国に追撃されるファルコンの正面Follow。追ってくるのは、超巨大なエグゼキュータなんだから、パンフォーカスじゃない方がよかったかも…。

 追加合成や追加カットによって、クラウド・シティがよりシティらしくなった。シティ内部からも空中都市であるように見せるためか、窓が増えクラウド・カーがビュンビュン行き交うのが見える。しかし、マット・ペインティングっぽすぎるカットも残り、まさに絵空事な都市なのだ。

「ジェダイの復讐特別編:予告編」
STAR WARS TRILOGY : SPECIAL EDITION TRAILER type3
 「ジェダイの復讐」の原題「RETURN of the JEDI」はもともと「REVENGE of the JEDI」だった。しかし、ジェダイに「REVENGE=復讐」という言葉は合わないとして「RETURN=帰還」に改題された。しかし当時日本では「復讐」の方で宣伝が進んでしまっていたため、変更しなかった。今回の公開をきっかけに改題してもよかっただろう。RETURNを復讐と訳してはいけません。でないと「続・荒野の七人(RETURN of the SEVEN)」は「荒野の七人の復讐」になってしまうっ!

 トレーラは「帝国の逆襲」公開後のバージョン。ハイライト・シーンの編集に過ぎず、前回デュープの流用、パープルの「ジェダイの復讐」フライング・ロゴが気味悪い。

06/15,日比谷スカラ座
「スターウォーズ<特別編>」
STAR WARS : A NEW HOPE ('97), 126min.
 特別編のサウンド・ミックスは、ドルビーデジタル・DTS・SDDS・ドルビーステレオなどで行われたが、スカラ座はドルビーデジタル仕様だった。20世紀FOXのファンファーレはモノラルだったのでアレ?と思ったが、画面一杯に登場するロゴとともにメインタイトルがステレオ再生される。

 さて、映像の方だが、デニスミューレン指揮の下、CGを利用して手が施されている。最も注目される点、フルCGIのジャバ・ザ・ハットだが、これは気に入らない!キャラがかわいくなってしまっただけでなく、ディティールの表現がイマイチ(特に鼻のあたり)だし、頭部のボリュームはねぇし、全体的にソリッドな感じで生物の質感に欠ける。ジェダイ・バージョンの方がずっと醜悪でイキイキしてる。

 逆によくできてたのはモス・アイズレーの描写だ。旧フッテージにキャラクターが大幅に追加されていて、賑やかになった。遠景にシャトルが飛び立つなど宇宙港の雰囲気が出ている。

 デススターへ出撃する反乱軍のX-WingやY-WingがCGIに変更され、大編隊となった。しかし、帰還する時は数が少なすぎではないか?それほど大掛かりなドッグファイトは描かれていないので、前後のつながり上、不自然だ。やはり反乱軍は少数精鋭で出撃したほうが緊迫する。

 デススターの爆発、タテに輪っかの広がりが加えられたものの、あれほど巨大なもののわりに爆発が小さいような。せめて「FIRST CONTACT」のボーグシップの爆発みたいになってればね〜。

 オビワンの有名なダイアログ「Use the force, Luke !」。スターウォーズ・サーガでは「Force」は重要な単語だ。初公開時、日本語字幕を担当した岡枝慎二氏は「Force」を「理力」と訳し、好評だった。これほどしっくりくる訳は他にはないだろう。ところが今回は「フォース」と訳され…訳してへんやん!そのまんま!まあ、それだけ一般的な単語になったんでしょうな。

「帝国の逆襲/ジェダイの復讐特別編:予告編」
STAR WARS TRILOGY : SPECIAL EDITION TRAILER type2
 上記「スターウォーズ特別編」封切り後の次回予告編。おそらく素材の提供を受けた日本編集と思われる。ハイライトシーンのモンタージュに過ぎず、わくわくもしない。漢字タイトルのフライングロゴなど、見たくもない。残るのはバックに流れていたベイダーのテーマのみだ。
「スターウォーズ3部作特別編:予告編」
STAR WARS TRILOGY : SPECIAL EDITION TRAILER
 東宝系の劇場で、3月頃から何度も何度も見た予告編。でっかいスクリーンの真ん中にぽつんとテレビだけがあんの。そのTVで1作目の映像が映ってます。でもこもったような音は小さくてモノラル。そしてナレーション。「若い世代はテレビの中のスターウォーズしか知らない」やがてブラウン管ではデススター攻防戦。デススタートレンチでTIEとX-wingのカットバック!そして1機のX-wingがテレビの中から飛び出した瞬間!スクリーン全体大迫力映像に切り替わって、音もすんごく広がって!初めて観た時はこの瞬間、涙が出ました。編集のタイミングが絶妙。
R E T U R N