『FLASHアニメーション制作バイブル』A.e.Suck来日記者会見

『FLASHアニメーション制作バイブル』の著者A.e.Suck氏が聖地から緊急来日し、パークハイアット東京にて記者会見が行われた。聖地からパークハイアット東京までは徒歩で数分の距離であることから、国内外からつめかけた300名を越す記者で甲州街道沿いにごった返し、騒然となる一幕もあった。

   その被り物はサルですか?

その通りです。ちょうどサルのカットにとりかかっているんです。アニメを描くには、まず自分で演じてみることが大事ですから。そのため、サルになりきる必要があるんですよ。『制作バイブル』にも登場しているサルですよ。

   その『制作バイブル』ですが『FLASHアニメーション完全攻略』以来6年半ぶりです。なぜこんなにも間があいたんでしょうか?

間があいたとは感じていません。カーペンターの『エスケープ・フロム・LA』は15年あいてますし、『2010年』『ゴッドファーザー PART III』『スターウォーズ・エピソード1』『ロッキー6』は16年です。『インディ・ジョーンズ4』や『スーパーマン・リターンズ』は19年、ロメロの『ランド・オブ・ザ・デッド』なんて20年ぶりだったし『サイコ2』と『マッドマックス4』は23年ぶりですよ!もっと挙げますか?『完全攻略』は古くなる内容ではなかったんで、同様な本は必要ないと思っていました。でも紙が古くなることは計算外だったんです。

   それが続編を書こうと思ったきっかけですか?

続編ではありません。私たちは『SXE』つまりスペシャル・エクステンデッド・エディションと呼んでいます。元々は、2005年11月末にオーム社から『完全攻略』の改訂版のオファーをいただいたんです。環境も変わり、Flashも進化したので、いい機会だと思って。もちろん、アニメーション技術の基礎に関しては変わりませんが。

   2005年ということは、かなり前から動き始めたんですね。

はい。私たちは制作に長い期間を費やすことになりました。改訂というよりはリメイクになったわけですから。私はまず、Flash 8で『完全攻略』をリメイクすることから始めました。可能な限り当時のキャストを集めてね。流用に見えるようなページも、文章やショットは微妙に違っています。なんと『ジャンピングFLASH 3J』までリメイクしました!それから100ページほど追加撮影もしたし、リリースを遅らせてまでCS3にも対応したんです。時間がたつにつれてプロジェクトの規模はどんどん膨らんでしまいました。前作はパートカラーでしたが、今作はオールカラーでかなりのボリュームになりました。スケジュールは切り直され、価格も見直された。幸い、テリー・ギリアムのような悲劇は免れました。スケジュールや予算の超過で保険会社が介入した挙げ句、中止になるなんてハリウッドでは珍しくないことです。

   ハリウッドは関係ないじゃないですか。

ハリウッドはCGIに頼りすぎですからね。やはり迫力や存在感はホンモノやミニチュアの方が説得力あるんです。『バイブル』でもCGIを使ったのはほんの一部に過ぎません。どこがCGIなのかはわからないと思いますよ。ほとんどが手描きなのです。私はリアリティを重視するべきだと考えたんです。人が手で描いたというリアリティです。読者がリアルに感じ取ってくれれば、必ず共感できると思いますよ。

   今回も十分なリサーチを行ったのでしょうか。

いいえ。プロジェクトは極秘に進められましたし、6年前のように試読会も先行販売もしませんでした。一部のネットに情報がリークされましたが、ある程度は仕方ないことだと思います。日本で行ったワールドプレミアでは読者の反応もよかったし、批評家も好意的で、ホッとしました。

   5章から7章までライブラリが続きますね。

ライブラリはFlashアニメーターの資産と言えます。ご存じのようにシンボルは使い回します。単一のファイル内だけでなく、複数の異なるプロジェクト、しかも将来的にも半永久的に使い回せるものです。ライブラリをどれだけ蓄えているかは、制作スピードとクオリティに大きく影響します。アーカイブされたライブラリには大きな価値があります。そして、ライブラリは次の世代へと受け継いでいくこともできます。私が死んでも、ライブラリは削除しない限り生き続けることができるんです。もしかしたら、私から受け継いだライブラリを用いて、1000年後に全く新しいムービーが作られるかもしれないんですよ。

   執筆は順調でしたか?何かエピソードがあれば。

ハーベイ・カイテルが前作に続いてスキップおじさんの役を引き受けてくれたことですね。彼はキャラクターについて私よりも理解していますし、前作以上に見事なスキップを見せてくれました。彼との仕事は非常にエキサイティングな経験ですよ。彼が追求している根底にあるものは、自分が演じるキャラクターの真実を見つけ出すことなんです。例えば、スキップの歩幅とか呼吸法など、読者には判らないような細かいことにもこだわります。でも彼にとっては非常に重要なことで、俳優として把握すべきことなのです。

   最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

『完全攻略』で多くのFlashアニメーターが生まれたように『制作バイブル』でもそうなるといいですね。『完全攻略』世代も、本が古くなってボロボロになってるでしょうから、買い直してほしいですwww。

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